調査研究

先行事例調査:英国グリーンディールの調査と分析

イギリスでは、住宅の断熱改修をCO2排出削減対策として2013年(平成25年)1月よりグリーンディール政策が実施されました。各家庭に対する、必要な省エネ対策を特定し、費用の概算を見積もるアドバイザー(省エネ診断士)と省エネ機器の導入に関する雑務やローンの手続きをワンストップで行うグリーン・ディールプロバイダの介入により、家庭に対する省エネ化の障壁をなくしています。

返済は、節約された電気料金から支払われ、引越しをした際は、ローンを不動産とともに残すことができます。また、節約される電気代から支払いをするため、初期費用が家庭にとって理論上ゼロになります(電気代の不払い率は低いため、債務不履行になることが少なく、消費者が費用を支払う仕組みであることから、行政府の負担も軽くなります)。

本プロジェクトではこの政策についての調査と分析を行い、2014年2月にはLCSと共催のワークショップで同政策の担当者を招き議論を行いました。(くらしからの省エネを進める政策デザイン研究国際ワークショップ~英国グリーンディール政策を参考に~

私達は、このグリーンディール金融の考え方は日本においても有望であると考えています。ただし、日英では気候、法制度、家屋の構造や慣習が異なるため、日英の差異、日本独自の事情を十分に考慮し、既存の社会インフラや法制度の枠組みの中で制度設計を行ってきました。

消費者の限定合理性の計測

省エネ家電の買い替え、太陽光発電システムの導入等において、「導入の初期コスト」は大きな障壁になります。ただ、毎月の節約エネルギー料金によって、初期コストは十分に回収できる範囲にある場合であっても、家庭の機器買い替えが進まない現状があります。

私達は、人間に備わった「損失回避性」という性質に由来すると考えました。損失回避性とは、行動経済学におけるいわゆる「プロスペクト理論」に基づく人間の限定的合理性に由来します。

私達はこれら行動経済学の理論を用いて「電気代そのまま払い」を行って家庭の初期コストを取り除くことが、どの程度省エネ機器普及に貢献するかを計算してきました。

実測データの推定

冷蔵庫の電力消費量については、「電気代そのまま払い」実証実験の共同主体機関である科学技術振興機構低炭素社会戦略センターにおいて実施している家庭の電力消費実測プロジェクトi-cosmosプロジェクトにおいて得られた実測データを利用しました。i-cosmosプロジェクトでは、自治体と協力し、現在229世帯において1分単位での家庭全体の電力消費、冷蔵庫・エアコン・テレビ単体の電力消費を計測しました。今回は、冷蔵庫実測データについて、2014年の1年間のデータ、そして同年に計測実地家庭に対して実施したアンケート調査回答による属性データを利用し、実際の冷蔵庫のエネルギー消費量を計算する式を推計しました。

測定コストの低減

「電気代そのまま払い」では、買い替えに先立って家電等の買い替え前の電力使用実態を把握する必要があります。しかし、HEMSは高価であり、「家庭エコ診断」(環境省が事業化している、家庭のエネルギー使用状況や省エネ可能性を診断する制度)も人の派遣が必要な診断であることから、家電の買い替えにより実現できる電気代の節約額と比較して、コストが大きすぎるのが課題となっています。そこで私達は、診断コストの低減可能性について、検討を開始しています。