研究紹介

当研究室のこれまでの研究項目の例を紹介します。

東日本大震災後のエネルギーシナリオと低炭素社会の実現可能性に関する研究

本研究では、COP21におけるパリ協定と東日本大震災のエネルギー政策への影響を考慮し、2030年までの日本全体のエネルギー消費量・温室効果ガス排出量および経済活動を応用一般均衡モデルにより推定する。
そしてポスト京都といわれる新たな枠組みの構築に向けた日本の目標値の設定やその経済影響を評価し、持続的な経済発展の下での温室効果ガス削減の施策を設計する。

スマートエネルギーネットワークに関する実証実験とその普及のための制度設計に関する研究

本研究では、太陽電池と燃料電池を備えたダブル発電住宅と、電気自動車(EV)との組み合わせを考慮し、このシステムの実現可能性・環境性・経済性に関する研究をおこなう。あわせてDemand Responseの可能性を検討する。また、このシステムに関する利用行動分析および需要調査を実施することにより、EVによるカーシェアリングの普及に関する検討を行う。

再生可能エネルギーの導入影響を考慮した多地域電源構成モデルの開発

近年、電力システムの低炭素化を目的とした固定価格買取制度の導入により、再生可能電源が急速に増加している。これにより、電力系統の周波数安定性や過渡安定度の維持が困難となりつつあり、系統運用技術の革新が求められている。本研究では、再生可能電源の大量導入を考慮し、ELD(経済負荷配分)とLFC(負荷周波数制御)手法を革新し、新しい電力システムマネジメントの概念を確立する。更には、電力システムにとどまらず、水素の生産と利用などエネルギーシステム全体のイノベーションにつながる研究を推進する。

電力システム改革後のアンシラリーサービ
ス取引制度の設計と評価に関する研究

2016年4月の家庭用小売電気の完全自由化と2020年を目途とした発送電分離に代表されるように、電力システム改革が進められている。本研究では、電力システム改革後の周波数安定性維持のためのアンシラリーサービス取引に着目し、この新しい取引制度の設計と評価を行う。更に、将来の電力市場の望ましい姿に関する検討を行う。

双方向ネットワークi-cosmosによる省エネ・低炭素化促進に関する研究

i-cosmosは、松橋が東大と併任で研究統括を務めるLCSにおいて開発された双方向エネルギー情報通信ネットワークである。ここでは、社会心理学や行動経済学の手法に基づき、i-cosmosを通じた節電・省エネ行動に関する情報を需要家に送る。需要家の反応に基づき、省エネ・低炭素促進のための情報コンテンツを開発する。また、新しいファイナンスの仕組みである「電気代そのまま払い」による省エネ技術の普及促進に関する研究を進める。更に、家電量販店やエネルギー事業者と連携し、本研究の社会実装を推進する。

関東・関西地方におけるホロニックネットワークの開発と実証実験に関する研究

本研究では、大規模停電、計画停電を予防するための停電予防連絡ネットワークを更に発展させ、双方向の情報ネットワークにより、停電回避、省エネ・低炭素化を総合的に推進するための研究を行う。停電予防連絡ネットワークでは、毎日の気象条件などから翌日の最大電力需要を予測し、電力会社の管内で供給予備率が一定値以下になると予測された時に、協力自治体を通じて直接地域住民に連絡し、節電行動を促している。ここでは、数百世帯の電力消費の実測データを利用し、上述のように本ネットワークの機能を拡大し、その効果を検証する。

気候変動の緩和に関する国際制度の設計と評価に関する研究

本分野では、気候変動緩和と南北格差縮小を目的とした技術移転制度であるクリーン開発メカニズム(以下CDM)の研究を行ってきた。具体的には、リアルオプション理論を応用し、CDMを活性化させるための排出権買取制度の効果を評価した。今後は日本政府が提案している二国間クレジットなどの新しい技術移転制度ならびに2013年以降の気候変動緩和のための新しい国際的枠組みの制度設計を行う。

エネルギー関連技術の市場普及に関する研究

本研究では、環境経済学的手法を用いて、革新的エネルギー技術の市場普及可能性を分析する。すなわち、太陽光発電、燃料電池自動車、省エネルギー家電、省エネルギー住宅などの属性と市場普及可能性の関係をコンジョイントやCVMなどの手法を用いて分析し、これらの普及施策の効果を定量的に評価する。

健康科学と低炭素化を考慮した住宅用エネルギーシステムの研究

本研究では、一般住宅における居住者の温熱環境と健康状態の関係を分析し、健康の改善と低炭素化推進を両立させる可能性を検討する。具体的には、実験住宅において多様な温熱環境を再現すると共に、被験者の心拍データ等の生理科学的情報に基づく健康状態の評価を行う。これに基づき、脳梗塞等の血管系疾患や熱中症等の健康リスクの低い省エネ、低炭素化の方策を研究する。